BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、建物の設計、施工、維持管理をデジタルで一元管理する革新的な手法のこと。この記事では、BIMの活用事例を紹介し、その効果や利便性を掘り下げます。また、国土交通省の建築BIM加速化事業についても解説。さらにBIMの導入による生産性の向上やコミュニケーションの円滑化はもちろん、将来的な建物の維持管理コストの削減にもつながるメリットを詳しく紹介します。
BIMの活用事例6つ
BIMは、設計から施工、維持管理に至るまで、建設プロジェクトのあらゆる場面で活用できるツールです。ここでは、積算、構造計算、施工、設備、シミュレーション、ビジュアライゼーションの6つの分野における具体的な活用事例を見ていきましょう。
積算
BIMは積算の精度と効率を飛躍的に向上させます。従来の方法では、図面を基に手作業で数量を拾い出し、手計算で積算を行う必要がありました。しかし、BIMを導入することで、3Dモデルから自動的に数量を算出し、瞬時に積算結果を得ることができます。これにより、積算作業の時間を大幅に短縮し、ヒューマンエラーを減少させることが可能です。
また、設計変更があった場合でも、BIMモデルを更新するだけで積算結果も自動的に更新されるため、迅速な対応が可能です。
構造計算
構造計算においても、BIMの活用は大きなメリットをもたらします。BIMを利用することで、設計段階から詳細な構造計算を行うことができ、建物の安全性を高めることができます。
具体的には、3Dモデルに構造的な属性情報を付加し、さまざまな荷重条件をシミュレーションすることで、最適な構造設計を実現します。これにより、建物の耐震性や耐久性を高めることが可能となります。
施工
施工段階においても、BIMの導入は作業の効率化と品質向上に寄与します。BIMを活用することで、3Dモデルを基にした詳細な施工計画を立てることができ、現場での手戻りを減少させることが可能に。
さらに、施工中の進捗状況をリアルタイムで把握し、モデル上で問題点を確認・修正することで、スムーズな施工を実現。また、関係者間での情報共有が容易になり、コミュニケーションの円滑化も図れます。
設備
設備設計においても、BIMの活用は欠かせません。BIMを使用することで、建物全体の設備配置を3Dモデルで視覚化し、設計段階から最適な配置計画を立てることができます。これにより、配管やダクトの衝突を未然に防ぎ、施工時のトラブルを減少させることが可能です。
また、設備のメンテナンスや運用に関する情報もBIMモデルに統合することで、効率的な維持管理が可能となります。
シミュレーション
BIMはシミュレーションにおいても強力なツールです。例えば、光環境や風環境のシミュレーションを行うことで、建物の快適性やエネルギー効率を最適化する設計が可能になります。
さらに、避難シミュレーションや耐震シミュレーションを行うことで、安全性を確保した設計を実現します。BIMを活用することで、設計段階から多角的な検討が可能となり、質の高い建物を提供することができます。
ビジュアライゼーション
最後に、BIMのビジュアライゼーション機能についてです。BIMは、3Dモデルを用いることで、建物の完成イメージを直感的に把握することができます。これにより、施主や関係者との合意形成がスムーズに進み、設計変更があった場合でも迅速に対応することが可能です。
また、ARやVRと連携することで、現実世界に近い形で建物のイメージを共有することができ、より具体的な打ち合わせが可能となります。
そもそもBIMとは?
建設プロジェクトの生産性向上に役立つBIMですが、そもそもBIMとは何なのでしょうか。ここではBIMの概要を簡単に説明するとともに、国土交通省によるBIMの活用推進の取り組みについても触れていきます。
BIMとは?簡単に説明
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、建物の情報を3Dモデルとしてデジタル上に構築するシステムのこと。従来の2D図面と異なり、BIMでは建物の形状情報に加えて、部屋の名称や面積、使用材料、性能情報などの属性情報も含まれています。
この統合されたデータにより、設計から施工、維持管理までの全プロセスを一元管理することが可能に。BIMを活用することで、設計段階からの詳細な計画が可能になり、プロジェクト全体の効率化と品質向上が期待できます。
BIMは国土交通省が活用推進している
日本では2019年を「BIM元年」と位置づけ、国土交通省が建設業でのBIMの活用推進を牽引してきました。建築分野では、「建築BIM推進会議」の設置や、BIM活用のためのガイドラインの整備などを進めています。
2023年度からは、国土交通省の建築設計業務でBIM/CIMを原則適用するとともに、民間でのBIMの活用も後押しする方針を打ち出しています。具体的には「建築BIM加速化事業」と題した補助事業を立ち上げ、BIM活用に積極的に取り組む事業者への支援を行っています。
建築BIM加速化事業とは?
建築BIM加速化事業は、国土交通省が推進するプロジェクトであり、建築業界におけるBIMの導入と普及を促進することを目的としています。この事業では、設計・施工・維持管理の全てのプロセスにおいて、BIMを活用することで生産性の向上とコスト削減を図り、建築物の品質向上を目指しています。
具体的に進められている内容としては、BIMを用いた設計や施工の標準ワークフローの整備、BIMデータの受け渡しルールの策定、各プロセス間の情報連携の強化などです。また、試行プロジェクトを通じてBIMの効果を実証し、その成果を広く公表することで、さらなるBIMの導入促進を図っています。
国土交通省はこの事業を通じて、BIMの導入に関するガイドラインや支援プログラムを提供し、建築業界全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させています。これにより、より効率的で持続可能な建築物の提供が期待されているのです。
BIM/CIM活用とは?
BIMとCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)は、それぞれ建築分野と土木分野で活用されている3次元モデルを中心とした情報管理手法です。
BIMは、建物の企画・設計から施工、維持管理に至るまでの建設プロジェクト全体で、コンピューター上に構築した建物の3次元モデルを活用する手法です。部材の形状だけでなく、仕様や性能、コストといった属性情報も含めて管理することで、設計の最適化や施工の効率化、品質の向上などを目指します。
一方でCIMは、構造物の3次元モデルに、設計・施工の属性情報などを連携させることで、一連の建設生産システムを効率化・高度化する取り組みです。測量で得られた地形データに構造物の設計情報を加え、施工や維持管理に活用することで、土木事業の生産性向上を図ります。
国土交通省は、建設事業の生産性向上を目指して、BIM/CIMの活用を推進しています。2023年度からは、設計から工事まで一貫してBIM/CIMを活用する「BIM/CIM原則適用」を進めています。
BIMを活用するメリット
BIMは、建築プロジェクトの各フェーズにおいて多大なメリットをもたらします。ここでは、BIMを活用することで得られる主な利点について詳しく説明します。計画と管理の効率化、コスト削減、コミュニケーションの強化など、BIMの導入による具体的な効果を見ていきましょう。
計画と管理をスムーズに行える
BIMでは、建物の企画から設計、施工、維持管理に至るまでの情報が一元管理されます。例えば、設計で変更があった場合、その変更が自動的に関連する図面や工程表、数量表などに反映されます。手戻りや手直しが減ることで、プロジェクトの計画や管理がスムーズに行えるようになります。
また、BIMモデルには部材の製造や調達、施工の情報も含めることが可能です。そのため、資材の発注や現場の手配なども、よりきめ細かく管理できるようになります。BIMを軸に情報を一元化することで、プロジェクト全体の最適化が可能になるのです。
コストを削減できる
BIMはコスト削減にも大いに貢献します。BIMモデルを用いることで、材料の使用量や施工方法を最適化し、無駄を削減できます。また、施工中に発生する変更や修正もリアルタイムでモデルに反映されるため、手戻り作業や追加コストを最小限に抑えることが可能に。
さらに、BIMによるシミュレーションを行うことで、施工前に潜在的な問題を発見し、事前に対策を講じることができます。これにより、プロジェクト全体のコスト管理が容易になります。
コミュニケーションと理解度を深められる
建設プロジェクトでは、発注者、設計者、施工者など、様々な立場の関係者が協力して進めていく必要があります。その際、お互いの考えを正確に伝え合い、共通の理解を得ることが大切です。その意味で、BIMは関係者間のコミュニケーションを深めるのに最適のツールといえます。
BIMで作成した3次元モデルは、建物の完成イメージを誰にでもわかりやすく伝えられます。例えば、設計案の内容を発注者に説明する際、パースや模型に頼らず、BIMモデルを見せながら議論を進められます。専門知識のない発注者の理解も得やすくなり、合意形成がスムーズに運ぶのです。
まとめ
BIMは、建物の設計・施工・維持管理の全工程で3Dモデルを活用し、生産性向上を実現する革新的な手法です。この記事では、積算、構造計算、施工、設備、シミュレーション、ビジュアライゼーションの6つの分野でのBIM活用事例を紹介。
さらに国土交通省が推進する建築BIM加速化事業の概要や、BIM導入による具体的なメリットも解説しています。建設業界ではDXが進んでおり、より良い建物を提供するために、今後ますますBIMの活用が広がっていくでしょう。
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