飲食店の内装作りで知っておきたい法律:建築基準法や消防法などを解説

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飲食店を開業する上で、内装に関する法律を理解しておく必要があります。飲食店では火を使って調理を行うため、一般的な店舗と比較して内装に関する法律が厳しく定められています。本記事では、飲食店の内装作りに関わる建築基準法や消防法について解説します。また、工事を行う際の注意点や、実際に設計や計画を行う際のポイントを紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。

飲食店の建築基準法についての解説

飲食店に関する建設基準法では、火災による被害を抑えるために様々な規定があります。違反すると法律により罰せられるため、飲食店を開業する前に必ず知っておく必要があります。ここでは、建築基準法について詳しく解説します。

建築基準法の概要

建築基準法とは、総則によると建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、公共の福祉の増進に資することを目的とする法律とされています。建築物の安全性確保を目的とした「単体規定」と、健全なまちづくりを目的とした「集団規定」に大別され、飲食店開業においては内装工事が密接に関係するため、「単体規定」が重要となります。

飲食店に適用される建築基準法の条文

飲食店においては、建築基準法第35条の2「特殊建築物等の内装」が適用されます。

“第35条の2 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。“

また、建築基準法施行令の第128条の3の2「制限を受ける窓その他の開口部を有しない居室」、第128条の4「制限を受けない特殊建築物等」、第129条「避難上の安全の検証を行う建築物の階に対する基準の適用」、第112条「防火区画」、第128条の3「地下街」なども適用されます。

これらの具体的な内容について、次章の「内装制限とその適用範囲」にて詳しく解説します。

建築基準法違反のリスクと対応方法

建築基準法第9条によると、建築基準法に違反した場合、特定行政庁から指導を受ける可能性があります。施工者だけでなく、建築主や管理者、占有者などに対して、使用停止命令などの是正勧告を受ける可能性もあります。是正勧告に従わない場合は、3年以上の懲役または300万円以下の罰金に科せられるため注意が必要です。

飲食店は、一般的な店舗と異なり内装に関する制限が厳しいため、飲食店の内装工事を得意とする設計会社、工事会社へ依頼することをおすすめします。また、飲食店オーナー様自身でも、最低限の知識を持っておくことで、法律に違反するリスクを減らすことができます。

内装制限とその適用範囲

飲食店において、内装制限に関する法律が定められており、建築基準法だけでなく、消防法にも関係があります。ここでは、内装制限についての概要や材料の使用基準について解説します。

内装制限の概要とポイント

内装制限とは、火災が広がったり避難が遅れたりすることを防ぐため、壁や天井の材料に制限を設けた法律です。飲食店に関しては、厨房部分と客席部分でも規定が異なるため、注意が必要です。また、地下街や11階以上の建物の場合、間仕切り壁のボードやクロスなどの内装材だけでなく下地についても適用される可能性があります。

厨房設備に関する内装制限

厨房では火を使用するため、より厳しい制限が設けられます。建築基準法施行令第128条の5の6により、壁や天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃以上にしなければなりません。

不燃材料・準不燃材料・難燃材料の使用基準

飲食店の内装制限における材料の使用基準については、建築基準法施行令にて詳しく解説されています。壁については難燃以上を使用する必要があり、床面から1.2m以下の壁は対象外となります。天井についても難燃以上という指定がありますが、3階以上の居室については準不燃以上の材料を使用する必要があります。ただし、厨房に関しては、壁・天井共に準不燃以上と記載されています。

消防法と飲食店の内装デザイン

設備 点検

建築基準法と同様に、消防法においても飲食店の内装デザインの制限が設けられています。ここでは、消防法の概要や飲食店について関係する規定を紹介します。

消防法の基本概要

消防法は、総則によると「火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする法律」とされています。建築物などについて、災害時の安全を守るために定められた法律であり、火を使用する飲食店の内装において密接に関わります。

防火対象物としての飲食店の要件

消防法において、建築物など火災予防の対象を防火対象物と定義しており、用途や規模に応じて要件が定められています。飲食店においては、消火設備、警報設備、避難設備の3つが必要です。消火設備は消火器やスプリンクラー、警報設備は火災報知器、避難設備は誘導灯などが挙げられます。また、厨房設備の合計熱量によって、フード消火設備が必要です。

スプリンクラーの設置条件と必要性

スプリンクラーは火災時における初期消火だけでなく、煙の発生も抑えることができるため、安全を守るために必須の設備です。飲食店におけるスプリンクラーの設置基準について、1階~3階の場合は延べ床面積6,000平方メートル以上(平屋以外)、地階・無窓階・4階~10階の場合は床面積1,000平方メートル以上、地階を除く階数が11以上の場合はすべてに設置が義務付けられています。

店舗工事における注意点

店舗工事を行う際、様々な注意点があります。その中でも、法令に関する3つの注意点について解説します。

工事開始前の法的手続き

工事開始前に必要な法的手続きとして、確認申請が挙げられます。一般的に新築の際に必要となりますが、店舗工事の場合でも条件を満たす場合に必要となります。主要構造物を過半修繕する場合や、前のテナントと用途が変更になる場合に必要です。

居室の設計と適切な材料の選び方

居室の設計を行う際、デザインだけで選ぶのではなく、耐久性や防火性能を踏まえた材料選び方が重要です。クロスや塗装など表面仕上げ材はもちろんですが、ボードなどの内装材、下地材についても法令に則った材料を選ぶ必要があります

天井、壁、床の仕上げに関する制限

天井や壁の仕上げは内装制限の対象となるため、建築基準法と消防法にて指定された材料を使用しましょう。不燃材料・準不燃材料・難燃材料の3つの中から、適切な材料を使用する必要があります。一方、床については、対象外のため内装制限による規定はありません。

厨房設備に関する法令と注意点

飲食店において、厨房設備を設置する際にも法令による制限があります。ここでは、3つの注意点を解説します。

厨房設備の設置条件

厨房設備には火災予防条例による設置条件が定められています。容易に転倒しないように設置しなければならないだけでなく、厨房設備と可燃物との離隔距離も定められています(上方100cm、側方前方後方15cm)。また、設置予定の厨房設備について入力合計が350Kw以上の場合は所轄消防署への届け出が必要です。

防火設備としての厨房の要件

飲食店における厨房は火を扱うため、特別な防火設備が求められます。消火器具に関しては、消防法施行令第十条「消火器具に関する基準」により、火を使用する設備又は器具を設けた部分に設置が義務付けられています。また、規模や厨房設備の入力合計により火災報知器やスプリンクラー、防火ダンパー付きの換気設備の設置も必要です。

木造建築物における厨房の特殊条件

一般的に、厨房に設置されたコンロと壁の距離を十分に保つ必要があります。距離が保てない場合は下地・仕上げともに特定不燃材料とする必要がありますが、木造建築の場合、下地は木材ですので構造上不可能です。壁を準不燃材料とした場合でも、壁の内部にある木造の柱や壁が加熱され、発火する可能性があるため、コンロと壁の距離を150mm以上離して設置する必要があります

避難経路と消火設備の設置基準

避難経路や消火設備についても、建築基準法と消防法にて定められています。ここでは、避難経路と消火設備の設置基準について解説します。

避難経路の設計と安全対策

避難経路は緊急時に避難する際の、屋内または屋外の通路のことで消防法及び建築基準法にて細かく規定されています。消防法では、第8条の2の4にて、避難の支障となるものを置かないように管理することと定められており、建築基準法施行令第119条では、学校や病院、共同住宅において幅員の指定があります。設計の際は、市区町村の条例で幅員が指定されている場合があるため、合わせて確認が必要です。

消火設備の種類と設置要件

消火設備の種類はスプリンクラー設備、屋内消火栓設備、屋外消火栓設備、連結送水管、連結散水設備、消防用水、消火器具の7種類があります。設置要件については消防法及び消防法施行令にて細かく規定されており、防火対象物や、延べ床面積、階数などにより設置の可否が決まります。

緩和措置とその適用条件

スプリンクラーなどの防火設備は、火災が起こった際に煙や炎の拡散を防止し、避難経路を確保するために設置されます。緩和される条件は用途などにより異なりますが、例として防火区画により避難経路への延焼を防ぐことで、設置が免除されたり規定の面積から除外したりすることが可能です。

飲食店の設計と建築計画

建築 設計

飲食店を開業する際、デザイン設計やテナント選びなどは経営に大きく影響します。ここでは、デザインやテナント契約のポイント、法令との関係について紹介します。

理想の内装デザインと実現方法

飲食店において理想の内装デザインを実現するためには、お客様にとって心地よい空間づくりが必要です。一から考えるのは難しいため、参考にしたいデザイン事例を収集し、お店のコンセプトに合うようにアレンジすると良いでしょう。ある程度コンセプトが固まったら、法令に基づいて適切な材料を選ぶことで理想の飲食店を実現することができます。

テナント選びと賃貸契約のポイント

デザインと同様にテナント選びも重要です。店舗のコンセプトやターゲットとするお客様など決めた上で、最適な立地を探しましょう。また、テナントの家賃についても精査する必要があります。飲食店において、大きくウエイトを占める経費が家賃と人件費です。事前に事業計画を立案して適切な家賃を算出し、予算内におさまるようなテナントを探しましょう。

都市計画法と建築区域の規定

飲食店はどこにでも開業できるわけではなく、都市計画法において、出店が制限される区域が存在します。第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、田園住居地域において飲食店を開業する場合は制限が設けられており、工業専用地域においては開業できません。テナントを探す際は、行政の窓口や不動産会社に問い合せ、開業が可能かどうかを確認しておきましょう

まとめ

本記事では、飲食店の内装づくりにおいて密接に関係する建築基準法や消防法について解説しました。専門的な内容が多く、飲食店オーナー様がすべて理解することは現実的に難しいといえます。しかし、法令に違反すると開業がストップするだけでなく、罰則を受ける可能性もあります。そのため、信頼できる設計会社や工事会社に任せることはもちろんですが、オーナー様自身も最低限の知識を持っておくことで安心して内装づくりに取り組めるでしょう。ぜひ本記事で紹介した内容を、飲食店開業の際には参考にしてみてください。

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